西洋医学の戦略構想はとても単純で明快で、子どもにもわかるシンプルな論理です。ただ、すこし野蛮だと思えるのですが。それは、悪者をあぶりだして死滅させようという発想です。
悪者であるがんを手術して、そのあとに放射線を照射して、とどめは抗がん剤で、全滅させるという戦略なのです。初めに、敵地に大掛かりな爆撃を加え、そのあと陸戦部隊を投入して敵を殲滅するというものです。確かに、初戦はそれで華々しく勝利を納めることができるかもしれませんが、そのような勝ち方はどだい長続きはしません。国を守り復興させる発想が同時になければ、国を破壊し尽くすだけで、結果は荒れ果てた国土が残されるだけに終わってしまいます。攻撃して死滅させるという西洋医学のその発想そのものにとても無理があると思っています。数多くのがん患者さんを見てきましたが、この発想ではごく初期のがん患者さんでしか、完治は望めないと思います。
繰り返しますが、がんを全滅させようという発想に無理があるのです。
攻撃も確かに大切ですが、並行して本来の体を守り自然治癒力を増進しようという発想が不可欠なのです。体力を強化し、免疫能力を増進させ、プロモーションに対抗できるパワーが必要なのです。そして、是が非でもプログレッションに突入してしまわないように、いかなる手立てをも躊躇してはならないのです。
結局、プロモーションの段階で押し留めることができなくて、プログレションにまで進んでしまうので人はがんに負けてしまうのです。裏を返せば、プログレッションを阻止することができれば人は死ななくてすむのです
誤解があってはいけないので、すこし付け足しておきますが、決して手術や放射線療法や抗がん剤治療を否定しているのではないのです。ただ、ことがん治療に関しては、従来の西洋医学だけでは不充分であると言いたいだけなのです。それが証拠に、初期のがんを除いて、中等度以上に進行したがんの治療成績はこのところほとんど進歩していないのです。
したがって、西洋医学の攻撃力と、栄養学、中医学、もしくは様々な民間療法などの補完代替療法(CAM;complementary alternative medicine)が持っている自然治癒力の増進効果とを、うまく組み合わせていくことが今とても必要なことだと我々は考えているのです。