遺伝子(DNA)が地球上すべての生物の、生命のよりどころです。

地球上に生命が誕生したのは、約40億年前ですが、自分を自分で複製することができて、より複雑な構造へと変化(進化)できる『DNA』という物質が地球上に現われたことが、生命発生の決定的なきっかけになったのです。

自己を複製できることが、『生命』の1つの定義ですが、もう1つ、自然に進化(変化)していくのも生命の大きな特徴です。DNAは自己複製と進化という2つの能力を合わせもった、とても合理的で完成度の高いシンプルな構造をした物質です。とても美しく神秘的な姿をしています。

DNAという物質は、らせん構造をしていて、そのらせん階段の踏み板の部分にあたるのが、4種類の核酸、アデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・チロシン(T)によるペアなのです。そしてこの核酸の(並びの)順序がそれぞれ決まった遺伝情報を担っていて、この情報に則って、生命は成長、維持、複製されるのです。

この4つの核酸(塩基)のうち、アデニンはチロシンと、グアニンはシトシンとペアを組むので、ほどけた2重らせんのそれぞれの1本が、アデニンはチロシン、グアニンはシトシンとまた新たにペアを組んで、2つの同一の2重らせんができるのです。すなわち自己複製をするのです。

そして、DNAが複製される際に、ごくごく稀に、ほんの少しミスコピーをしてしまうことがあるのです。

もちろん結果的には、ほとんどの場合はミスに終わるのですが、稀に従来よりも強い、より複雑化した、より環境に適応できる(進化した)子孫ができることがあるのです。

おそらくこのようなミスコピーがあったからこそ、我々人類も進化の末にこの世に出現できたのだと思います。神様の賭けの勝利なのでしょうか、 DNAの複製劇の中に、生命の進化の鍵が潜んでいるのですが、進化はリスクと同居しているのです。神様は決してサイコロをふらないと主張する科学者がいたようですが、どうやらそうでもなさそうです。神様も賭けをするのです。その賭けは進化の可能性を広げることにもなるのでしょうが、いっぽうで『がん細胞』という強力な細胞を産みだすことにもつながります。