医師や患者さんのがんに対する考え方が間違っていたために、あるいは単にがんに対する適切な知識がなかったために、本来ならば治るはずであったがんが治らず、不幸な転機をとってしまった人がたくさんいらっしゃることは事実です。むしろそういったケースの方が圧倒的に多いでしょう。

かなりの割合で、がんそのもので命をなくしているというよりも、むしろ、がんに対する治療が適切でなかったために死んでいるのです。いいかえれば、適切な考え方をして、適切な知識があれば、大半のがん患者さんは死なずにすんだということなのです。がんが発見された時にはどうしようもなく進行してしまっていて、手の施しようがないというようなケースは現実には非常に稀だと思います。ほとんどのケースは、考え方が間違っていたためか、あるいは"無知"のために、不必要に命を縮めたり、苦しい最後を余儀なくされているのだといっても過言ではないと思います。

比較的早くに、がんをみつけることができたとしても、すばらしい治療法があったとしても、それを生かしきれなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

たいていの場合、降って湧いたようにがんの告知を受けるわけですから、パニックになってしまって、冷静な判断が下せないような状況に陥っています。しかし、がんは治らないと心の底で確信している医者の言われるがままの治療法に飛びつくことは危険です。

まずは、ご自身が冷静になり学んでいただきたいのです。学ぶというと堅苦しく聞こえるかもしれませんが、要は"がん"に関して、正しい考え方と知識を身に着け、正しい治療を選択していただきたいのです。がん患者さん、あるいは、これからがんになるかもしれない人達が、あらかじめがんに対する教育をしっかりと受けているのならば、がんの治癒率は各段に向上するのです。それは、単に寿命が長くなるというだけではなくて、生活の質(QOL;quality of life)も各段に違うことをも意味します。

私たちは、医療人として、"できる限り長生きを!しかも最後まで元気で!"という思いを込めて、一人でも多くのがん患者さんに、ぜひとも適正な考え方、知識を身に着けていただきたいと切に願うのです。