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予防医療の最前線1 -腸内常在菌-

健康なヒトの腸内には、1000種類以上、約100-1,000兆個 の腸内常在菌が存在しています。これらの腸内常在菌は、ヒトに有益なもの(いわゆる善玉菌)と有害なもの(悪玉菌)、腸内の状態によってどちらにもなる日和見菌があります。しかも善玉菌も悪玉菌も常に同じ働きをするわけでなく腸内環境によって変化します。そして、腸内常在菌の割合は、年齢や生活習慣などの違いから個人差がかなり大きく、また食物の消化・吸収だけでなく免疫系や神経系の働きとも密接に関わっているため個人差から有用な情報が得られれば健康維持の手がかりとなるのです。

腸内常在菌を検査する時代に

 1960年代より始められた腸内常在菌の研究によって、その検索・分離・培養が可能になりました。その結果、腸内常在細菌のほとんどが偏性嫌気性菌である事がわかりました。現在は最新の技術を用いて400種類の細菌種が培養可能とされており、今まで菌群レベルでしか解明されていなかったものが菌種レベルまで判る様になりました。

 一方、培養を介さない手法の発展により腸内常在菌の多様性解析が飛躍的に進展し、1990年代以降には165RNA遺伝子の特定配列をもとにしたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法により多種類の細菌種が混在する試料から特定の菌種の検出・同定が可能になりました。

生活特性が腸内常在菌に及ぼす影響

 ヒトの腸内常在菌には、その人の生活特性(※1)との関連が解明されてきました。

たとえば、飲酒や喫煙の有無、ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂っているか、便秘はあるか、といった特徴から腸内細菌の構成が決まってくるのが判り図表1の様な8つのグループに分けることができました。

※1:年齢・性別・BMI(ボディマスインデックス)・食生活・運動習など

グループ

属性(生活特性)

主な腸内細菌

グループ1

禁煙・飲酒なし、便秘気味
BMI標準内の60歳以上の女性群

フィルミクテス、ルミノコッカス、クロストリジウム??a、バクテロイデス

グループ2

乳酸菌を摂取
BMI標準内の59歳以下女性群

クロストリジウム?+???、ルミノコッカス、ビフィドバクテリウム、コーリオバクテリアセアエ、ユウバクテリウム、アクチノマイセツ

グループ3

禁煙・飲酒なし
野菜、海藻、魚介類、納豆を摂取BMI標準内の60歳以上の女性群

クロストリジウム?、ユウバクテリウム、ルミノコッカス、バクテロイデス

グループ4

BMI標準内の女性群

クロストリジウム??a、フゾバクテリウム、ユウバクテリウム、ルミノコッカス、バクテロイデス

グループ5

野菜、海藻、魚介類、納豆を摂取する群

クロストリジウム??a、ユウバクテリウム、ストレプトコッカス、アクチノマイセツ

グループ6

便秘でない59歳以下の男性群

クロストリジウム??a、ユウバクテリウム、ルミノコッカス、スラッキア、コリンゼラゴードニバクター

グループ7

喫煙・飲酒習慣あり
野菜、海藻、魚介類、納豆を摂取
BMI標準外の60歳以上の男性群

クロストリジウム、ラクノスピラ、セレノモナス、パラバクテロイデスラクトバチルス

グループ8

喫煙あり
BMI標準外の59歳以下の男性群

クロストリジウム、フゾバクテリウム、ロゼブリア、ラクトコッカス、ストレプトコッカス、バチルス

(日経サイエンス20172月号 新時代を迎えた腸内常在菌研究を引用)

また、「データ・マインディング手法」を駆使した相関性試験により、心理的・精神的状態との関連性を検索したヒトの腸内常在菌のパターンが図表2になります

グループ

心理的・精神的状態

主な腸内細菌

1グループ

1ヶ月間、身体的によくない
60歳以上の女性群

ファーミキューテス類、ルミノコッカス、クロストリジウム?+Va、バクテロイデス

2グループ

心理的・精神的にすぐれない
59歳以下の女性群

クロストリジウム?+??、ルミノコッカス、ビフィズス菌、コーリオバクテリア、ユウバクテリウム、アクチノマイセス

3グループ

全体的に健康状態はよいが、1ヶ月間気分がすぐれないこともある
60歳以上の女性群

クロストリジウム?、ユウバクテリウム、ルミノコッカス、バクテロイデス など

4グループ

認められる心理的・精神的影響なし

クロストリジウム?+Va、フソバクテリウム、ユウバクテリウム、ルミノコッカス、バクテロイデス など

5グループ

心理的・精神的状態がよい場合と悪い場合がある

クロストリジウム?+Va、ユウバクテリウム、連鎖球菌、アクチノマイセス

6グループ

睡眠の質があまりよくない
59歳以下の男性群

ルミノコッカス、スラキア、コリンゼラ、ゴルドニバクター

7グループ

健康状態がよく、朝の目覚めがよい
60歳以上の男性群

クロストリジウム、ラクノスピラ、セレノモラス、パラバクテロイデス、ラクトバチルス

8グループ

自己健康評価はよいが、1ヶ月間気分がすぐれなかった
59歳以下の男性群

ロゼブリア、ラクトコッカス、連鎖球菌、バチルス など

(腸内細菌の業額のパワーとしくみより引用)

 この様に腸内細菌の多様性解析の進展により宿主が有する腸内細菌が判明してきており、個人ごとの腸内常在菌のパターンを知ることは、健康維持・増進及び疾患リスクの軽減、健康QOLの向上に結びつき、健康予防効果を促進し、国民医療費の大幅削減に貢献されていくと考えられています。

(ちょっと、復習) -プロバイオティクスとプレバイオティクス -

 プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届いて人体によい影響を与える微生物、あるいはそれを含んだ食品のことです。その代表格が乳酸菌とビフィズス菌で、食品ではヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆などです。

一方、近年注目を集めているプレバイオティクスとは、プロバイオティクスの働きを促すもので腸内の善玉菌にだけに働き、増殖を促したり活性を高めたりすることで健康に有益な物質のことを言います。具体的には、腸内環境を整えるオリゴ糖や食物繊維などです。

腸内常在菌からわかること

 ヒトの腸内常在菌の構成パターンは、極めて個人差が大きく、消化管の構造や機能に影響し、栄養や生理機能、薬効、老化、発がん、免疫、感染などに大きな影響があります。

腸内環境は加齢と共に善玉菌も減少することが分かってきています。

いま現在、腸内常在菌関連で脳内物質との関係、肥満のメカニズムの解明、機能性食品の開発、脳の発達や学習、記憶、行動など多方面からの研究が行われています。

 近い将来、腸内常在菌の解析データベースの構築により個人の生活習慣や体調に合わせた健康維持や病気予防のプランを組み立てることが可能になるでしょう。

まずは、腸内常在菌を知ることが個人の生活習慣の改善や体調管理、健康維持や病気予防への第一歩になるのではないでしょうか。

 

参考文献

「新時代を迎えた腸内常在菌研究」辨野義己(理化学研究所) 日経サイエンス20172月号
「常在細菌叢が操る ヒトの健康と疾患」 編集 大野 博司・服部 正平 出版 羊土社

「腸内細菌の話」 光岡 知足  岩波新書
「臨床検査学講座微生物学/臨床微生物学」岡田 淳ほか 出版 医歯薬出版
「からだの中の外界 腸のふしぎ」上野川修一 講談社
「腸内細菌を味方につける30の方法」藤田紘一郎 ワニブックス
「腸内細菌の驚愕のパワーとしくみ」辨野義己 C&R研究所
 

文責:サプリメントアドバイザー 加藤晴之
腸内細菌叢検査については>>こちら  

 

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